南阿沙美

写真家
シブカル祭。初参加となる南阿沙美。2014年度写真新世紀で優秀賞を受賞した代表作『MATSUOKA!』をはじめ、独特の視点で切り取られたユニークな写真が持ち味の彼女。写真家としてのスタートから、シブカル祭。への意気込みまで、南阿沙美の「今」にまつわるお話しを伺いました。
現在の活動に至るまでの経緯を教えてください。
高3までバリバリの陸上部で進学のこともあまり考えていなかったんですが、夏休みにふらっと入ったギャラリーで現代美術に出会いました。ペン1本で絵を描いている作家さんの作品展で、「あ、これもありなんだ」と驚いて。もともと絵を描くのが好きだったので、「だったら私もやりたい、できるかも」と思い美大を目指しました。
そして、美大の授業で写真に触れたことがきっかけで撮り始めましが、もともと写真をずっとやるつもりも、大きな夢や目標があったわけでもなく、卒業後は全然関係のない仕事をしながら好きなように撮っていました。26歳になる少し前に北海道から上京してからも、3年くらいは相変わらず好きなように撮っているだけで。でもその後、毎日撮りたいなと思うようになり、写真を仕事にしようと、約3年間、写真スタジオに勤め、1年くらい前にフリーになりました。今は作品としての撮影もお仕事での撮影もできていて、写真を撮るといううえでとても自由になりました。
今の自分に影響を与えた人/作品/出来事を教えてください。
いっぱいありますが、アーティストや作家よりは、友達とか、その時々に出会った人ですね。あの人みたいになりたいとか、あの人に認められたいとかはないかも。写真家に憧れると作品を意識しちゃうのでよくないし。
荒木経惟さんや佐内正史さんなど好きな写真家はいます。でも、その人たちみたいな写真が撮りたいというわけではなくて。彼らの写真集などで作品を見た後に顔を上げると、それまで見ていた写真の世界が圧倒的で、戻れなくなる感覚になります。
代表作はどういう作品ですか?
『MATSUOKA!』と、ほぼ同時期に撮り始めていた『親子写真入門』というシリーズが、今、ある程度見せられるようになってきました。『MATSUOKA!』は完結していますが、『親子写真入門』はまだ続いています。
『MATSUOKA!』で、初めて写真新世紀(2014年度)に応募したんですが、「これで選ばれなかったらおかしい」と思っていました(笑)。選ばれなかったら、よっぽど私の作品が今の時代に合っていないんだなと。なので、賞をいただいて、作品への自信と言うより、私が面白いと思ったものは面白いんだ、自分の判断が合ってたんだっていう自信がつきました。

『MATSUOKA!』シリーズより
作品を発表するときに気をつかうことは何ですか?
展示する場所とサイズはすごく大事ですね。一番気を使うのは、見る人の入りやすさ。力の与えやすさと言うか。観客が1枚の写真と向かい合ったときに、ドンッと見えるようにしています。見せる責任っていうのがあると思うんです。埋もれてしまったらその作品もかわいそうだし、ちゃんと見た人の中に残るものにしたいです。
これからどんな表現をしていきたいですか?
写真って難しいと思われることが多くて。作品を見る側に、そこから意味を捉えないといけないんじゃないかというプレッシャーがあるらしいんです。でも私はそういうのはあまり気にしてなくて、「面白い」とか「なんかいいよね」とか、感想に困らない写真を見せていきたいですね。それと、私、有線放送に嫉妬してて(笑)。これは保留中なんですが、コンビニで展示してみたいんです。コンビニでかかってる有線放送って、音楽を好きじゃない人も聞いていて、自然に入ってくる。そんなふうに、写真を特に好きじゃない人でもついつい見てしまったり、ちょっと気になったりする。そういう展示をしたいです。
いま、興味を持っていることは何ですか?
「言葉」ですね。私は意外と保守的なところがあって、写真は写真だけで勝負しなくてはいけないと思っていたんです。写真とポエムを組み合わせた作品もありますが、あのお互いを支えあっているようなところがあまりいいと思えなかった。でも、もともと文章を書くのは好きで、短歌を詠んでいたりしたので、写真とは別に言葉を使った表現をやっていきたいなと思っていました。
以前、画家の山口晃さんの取材撮影をさせていただいたときに、山口さんが「ジャンルはこれと決めずに、作りたいものを作ればいいと思うんですよね」というようなことを仰っていて。その後水戸芸術館での個展へ行ったら、絵はもちろんなんですが、インスタレーションの作品がめちゃくちゃよかった。「やっぱり作りたいものを作ろう!」って思えました。
「シブカル祭。」に出展する作品について、構想があれば教えてください。
『MATSUOKA!』を見せたいというのもあるんですが、短歌とか、言葉を使ったこともやってみたいですね。できるだけ大きめのプリントで見せるとか。あとはせっかくなのでお客さんの撮影もしたいなと思っています。『MATSUOKA!』の衣装を着てもらって撮影して展示して、その人が後からまた見に来れてみたいな、日をまたいで関われるというのをやりたいです。私に撮って欲しいと言っていただけるとも多くて。それが、すごく嬉しいんです。
現代の女子クリエイターについてどう思いますか?
実はなんで男女を分けるんだろうって思ってるんです。陸上をやっていたときは、体の作りが違うので当然差はあったんですが、ものづくりに関して性差はないと思っています。女性らしい表現とか男らしさとか傾向はあると思うんですが……。でも、女の子って強い。すごく立派だと思う。女の子はある一定のラインを超えたら無敵感がすごいし、すごい力を持っていると思います。男の人は隠そうとするけど、弱いところをなんとかしようとすることころもすごい。女の子は勝手にやるからほっといても大丈夫って思いますね(笑)。
「シブカル祭。」への意気込みをどうぞ。
楽しませたいです! 無差別に楽しませたい(笑)。今後の目標としては、とにかく大勢の人に写真を見せたいです。見せびらかしたいというか、自分の撮った写真を有線放送みたいに人目に触れさせたいです。