シブカル祭。2015

INTERVIEW

vol.03

惣田紗希

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グラフィックデザイナー、イラストレーター

インディーミュージック関連のデザインを中心に手がけるクリエイター・惣田紗希がミツカルTに参戦! グラフィックデザイナーとして活動するかたわら、フラットな表情の女の子をモチーフにしたイラストで注目度上昇中の彼女に、最近の活動や創作への思いを聞いてみました。

Q.1現在に至るまでの経緯を教えてください。

デザインの専門学校を卒業後、しばらく書籍デザインの事務所で実用書をデザインしていました。会社をやめた時期とほぼ同じタイミングに、学生時代の同級生の柳智之くんが所属していたインディーズバンドceroのヴォーカルをやっている髙城晶平くんに声をかけられて、1stアルバム『WORLD RECORD』のジャケットデザインを手がけました。ceroつながりで音楽関係の仕事が増え、今もいろいろデザインさせてもらっています。女の子のイラストはザ・なつやすみバンドというバンドのアルバムジャケットで初めて登場しました。

Q.2デザイナーとイラストレーター、どちらの仕事が多いですか?

五分五分くらいですね。イラストだけを依頼されることもあるし、構成からイラストまですべてやることも。デザイナーとしてほかのイラストレーターさんに発注することもあります。ceroの1stアルバム『WORLD RECORD』と2ndアルバム『My Lost City』、ザ・なつやすみバンドの1stアルバム『TNB!』と2ndアルバム『パラード』のジャケットは特に思い入れが強いです。この2組については音楽家と直でやり取り出来るので、お互い意見を出し合って納得いくまでつくれて大変だけどすごく面白いです。

 

(左から)ceroの『WORLD RECORD』、『My Lost City』、ザ・なつやすみバンドの『TNB!』、『パラード』

 

Q.3今の自分に影響をあたえた人や作品を教えてください。

高校時代に雑誌『BRUTUS』や『STUDIO VOICE』を知り、エディトリアルデザインに興味を持ちました。Capの藤本やすしさん、雑誌『ku:nel』の有山達也さん、羽良多平吉さんなど、1990~2000年代のグラフィックワークから、たくさんの刺激を受けました。その後イラストの仕事も増え、デザイナーで在りたいけどイラストを描いていていいのか悩んでいた時期もあったのですが、宇野亜喜良さんや横尾忠則さんみたいに、昔はグラフィックデザイナーをしていたけど今は作家性の強い作品を描く人もいるんだって知って、とりあえず成り行きに任せてみようというモチベーションに変わりました。

 

Q.4女の子のイラストレーションはいつ頃描き始めましたか?

仕事で発表する前からで、実は7年くらい。前は漫画家になりたかったのですが、漫画って物語も構図も絵も、すべての要素が必要な総合芸術で、すごく難しい。しかもすべてが面白くないとだめ。「あ、無理だ」ってあるとき思ったんです。でも絵を描くことは好きだったので、女の子をずっと描いていました。最初は表情もしっかりあったのですが、身体の動きやフォルムの方に自分の興味が向いていることに気づいて、顔はもういいかなって(笑)。学生時代に出会ったRosas danst Rosasというダンスカンパニーからもすごく影響を受けています。同じ衣装の人たちが同じ動きをするコンテンポラリーダンスで、ミニマムな雰囲気がすごく美しいと思いました。その感動が今の画風につながっているかもしれません。

 

Q.5ミツカルTシャツの制作意図を教えてください。

ゆるく、自分らしく描きました。「しぶや」と文字を平仮名にしたのは、柔らかい印象にしたかったから。可読性ギリギリのラインを狙ったデザインです。山あり谷あり、ぐにゃぐにゃしていて入り組んだ、渋谷パルコの周りの道路がイメージ。実は通っていた専門学校も勤めていた事務所もパルコの近くにあったので、上のレストランフロアでラーメンを食べたり、地下一階の書店には週に何度も通ったり……、あの辺りにはすごく馴染みがあるんです。渋谷パルコは私にとって買い物に行く場所っていうより、日常の中にある場所だったんですよね。

 

Q.6いま考えていることを教えてください。

近頃は政治の動きに対して、考えるべきこと、知るべきことがたくさんあるのではないかと感じています。SNSで意見を表明している人もいれば、引いてしまう人、無関心な人も多い。それぞれの温度差が大きいじゃないですか。どういう方向にしても、争い事にならずよい方向に進めばいいなと思い、せめて考えるきっかけづくりができないかと、私なりにイラストを描いています。伝えたいメッセージがぱっと視覚的に伝わるのがイラストのいいところ。自分も含め、考えるとっかかりになればいいなと思っています。

   自身のTwitterに投稿したイラスト

 

 

Q.7どんな作品をつくっていきたいですか?

CDジャケットや書籍のデザインなど、生活の中であり続けるもの/生活の中にいつも存在するものをつくっていきたいです。CDや本は、作家やミュージシャンが好きだからこそ手に取り、本棚とか空間の中に収まっていくもの。その中でもお気に入りになれたらいいなとか、例えば引っ越すときにこれは捨てないでおこうって思われるような存在を生み出していきたいです。デジタルが主流になってきているけど、本やCDがある限りはそれを続けていきたい。イラストレーターとしては、大きな画面に描いてみたいです。お仕事だとそういう機会があまりないから、いつか挑戦してみたいです。

 

Q.8告知があれば教えてください。

作品集を出版しました。ポストカードブックで、女の子や植物をメインに描いています。最近、植物を描くのも好きなので。その発売イベントという形で9月に原画展を開催します。水彩絵の具を使って描いた原画は、印刷された書籍とはまた表情が違っているので、ぜひ会場に見に来てください!

http://errandpress.com/info/011

 

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